役員とは?
自社の役員を変更するにあたり、「そもそも会社の役員とは?」「ポジションにより、どのような業務に携わるのか?」と疑問を持つ方も少なくないようです。そこで、まずは役員に関する概要を説明します。
取締役
取締役とは、業務執行に関する意思決定を行う役員のことです。取締役会を設置している会社においては、代表取締役が業務執行を担うことになります。
現在の会社法が施行される前は取締役会の設置が義務付けられており、最低でも3人の取締役と1人の監査役を設置できました。しかし現行の会社法では、取締役1人だけでも会社を設立することが可能です。
取締役は株主から委任されて就任し、経営に対して責任を負う立場です。そのため状況によって、次のような場面に対処しなければならないこともあるでしょう。
- 業績により役員報酬の一定額を返上する
- 任務を怠ったことが理由で生じた、損害の賠償責任(任務懈怠責任)を負う
- 不祥事などの監督責任を問われ、株主代表訴訟を提起される
また従業員でも“目標未達により、上司から叱られる”ということはありますが、法的な責任は取締役が負います。したがって場合によっては、「自ら辞任せざるを得なくなる」「任期の途中で解任する」といったケースもあります。
加えて、取締役は従業員ではなくなるため、一度会社との雇用契約を終了した後、委任契約を結ぶことになります。残業や休日出勤、福利厚生の適用といったルールが従業員とは異なることもあるため、社内から昇進して取締役に就任する際などは注意しましょう。
監査役
監査役とは、株主総会で選任される会社法上の役員のことです。
監査役の主な業務として、下記のような会計監査・業務監査があります。
- 株主の目線から会社が健全に運営されているか確認する
- 取締役の業務に不正がないかを独自に調査・監視する
また取締役会や株主総会で報告したり、不正行為差止請求をしたりする権限があります。
会計参与
会計参与とは、取締役と共同して会計書類などを作成する役員のことです。
いわば“会社における会計の専門家”といっても過言ではないでしょう。当役職は、2006年5月に施行された会社法により新設されました。
主な職務として、下記のようなものが挙げられます。
- 会計参与の職務
- 取締役と共同での計算書類の作成、保管、開示
また会計参与の設置は任意で、監査役が会計監査を兼務するケースもあります。
【豆知識】
会社は設立した際や役員が変更になった際も、必ず法務局で商業・法人登記を行わなければなりません。より詳しい情報については、法務省の公式サイトをご確認ください。
上記で紹介した「取締役」「監査役」「会計参与」、3種の役員に関する情報をより深く掘り下げた記事があります。こちらもぜひ参考にしてください。
役員変更における手続きの流れ
続いて、役員変更における手続きの流れを見ていきましょう。
具体的な手順として、下記の3つが挙げられます。
- 株主総会を招集
- 承認決議を行う
- 役員の変更登記を行う
株主総会を招集
役員を変更する場合、まずは株主総会を招集します。
株主総会には「定時株主総会」「臨時株主総会」の2つがありますが、その違いは以下の通りです。
- 定時株主総会:就任による変更、任期満了に伴う重任、退任による変更の際に実施する
- 臨時株主総会:役員の死亡・辞任・解任など、任期満了以外の役員の変更の際に実施する
そのためケースバイケースで、株主総会の種類を決めると良いでしょう。
承認決議を行う
次に、変更した役員の承認決議を行います。
決議が必要な場面として、以下のようなものがあります。
- 新しい役員を入れる(※就任する)
- 任期を満了したものの、引き続き同じ役員が継続して務める(※重任する)
- 任期満了につき退任した
ただし役員の死亡、辞任に伴う変更については、決議を要しません。
また「就任」「重任」といった具体的な変更事由ついては、後の章で詳しく解説します。
役員の変更登記を行う
承認決議後は2週間以内に必要書類を添付し、変更登記申請をしましょう。
この手続きは選任後2週間以内(※本店所在地の場合。支店所在地であれば3週間以内)に、それぞれの管轄の法務局で行わなければなりません。
また期間内に手続きができていなかった場合、その後に手続きを行ったとしても、会社・法人の代表者に対し、裁判所から100万円以下の過料を科せられる可能性があります。
さらに役員の変更登記を行わないまま、12年間以上経過すると、法務省が休眠会社として扱うおそれがあります。したがって役員の任期が満了した際は、確実に変更登記をすることが大切です。
役員が変更になる事由とは?
この項目では、役員が変更になる事由を解説します。
詳細を以下の表にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
変更事由 | 変更事由の説明 | 申請書の登記すべき事項の「原因年月日」の記載 |
就任 | 新たに役員に就任するというケースです。なお一度役員に就任後、期間を空けて再度役員(再任)になる場合も登記簿上は就任と記載されます。 | 令和〇年〇月〇日就任 |
重任 | 任期満了した役員が退任後も引き続き役員を務めるというケースです。 | 令和〇年〇月〇日重任 |
任期満了による退任 | 任期満了した役員がそのまま退任するというケースです。 | 令和〇年〇月〇日退任 |
辞任 | 役員が自らの意思で役員を退任するというケースです。 | 令和〇年〇月〇日辞任 |
解任 | 株主総会の決議によって役員が解任されたというケースです。 | 令和〇年〇月〇日解任 |
死亡 | 役員が死亡した事により退任するというケースです。 | 令和〇年〇月〇日死亡 |
欠格事由に該当 | 会社法で定める役員の欠格事由に該当した事により退任するというケースです。 | 令和〇年〇月〇日資格喪失 |
■欠格事由とは:
欠格事由は会社法第331条1項会社法により、以下が定められています。
- 法人
- 会社法、証券取引法、破産法その他一定の法律に定められた罪により刑に処せられ、その執行を終わった日(もしくは執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない者
- 上記以外の罪により禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者(執行猶予中の者は含まれない)
【豆知識】
会社の役員の変更事由が「解任」「欠格事由に該当」で、登記簿上に「令和〇年〇月〇日解任」「令和〇年〇月〇日資格喪失」との記載がされると、取引先から良くない心象を抱かれるおそれがあります。
- 解任に該当した場合:「会社内で身内による揉め事が過去にあったのだろうか?」
- 欠格事由に該当の場合:「何か悪いことをして逮捕された役員が過去にいたのだろうか?」など
そのため、できる限り「解任」「欠格事由に該当」で登記する事がないよう、退任する役員とよく話し合ったうえで「辞任」と登記しましょう。
役員の変更事由に応じた登記必要書類
また役員の変更事由に応じた、登記必要書類を紹介します。
詳細については、次の表をご確認ください。
変更事由 | 法務局に提出する登記申請書類 |
就任 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・株主総会の議事録 ・株主リスト ・就任承諾書 ・議長および議事録署名人と本人の印鑑証明書 ・住民票記載事項証明書などの本人確認証明書 ・定款 |
重任 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・株主総会の議事録 ・株主リスト ・議長及び議事録署名人の印鑑証明書 ・定款 ・就任承諾書 |
任期満了による退任 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・株主総会の議事録 ・株主リスト ・議長及び議事録署名人の印鑑証明書 ・定款 |
辞任 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・辞任届 ・印鑑証明書(法務局に印鑑を届出している役員が辞任の場合) ※ただし株主総会の席上で辞任の旨を表明し、株主総会の議事録や株主リストが提出された場合、辞任届は不要です。 |
解任 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・株主総会の議事録 ・株主リスト ※代理人による申請の場合は、委任状が必要です。 |
死亡 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・当該役員の死亡診断書または戸籍謄本等 |
欠格事由に該当 | ・株式会社役員変更登記申請書 ・登録免許税(収入印紙) ・欠格事由に該当したことを証する書面(成年後見登記事項証明書、後見開始の審判書謄本、判決書の謄本など) |
上記に掲載した通り、どの変更においても「株式会社役員変更登記申請書」「登録免許税(収入印紙)」の添付は必須となります。収入印紙に関しては法務局で購入できるため、あらかじめ準備しなくても問題ありません。
また添付書類はご覧いただいたように、「なぜ役員を変更するのか」という事由によって、必要なものが大きく異なります。そのため事前に用意する書類などを確認し、手続きを進めましょう。
■「株式会社役員変更登記申請書」は、下記「法務局のサイト」からダウンロードできます。
役員変更には「ラクリア 法人登記変更」がおすすめ!
ここまで役員変更における手続きの流れや、変更事由に応じた登記必要書類などについて解説しました。
ご覧いただいたように、会社の役員を変更するにはさまざまな工程が生じるぶん、多くの手間やコストがかかってしまいます。
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そのため「できる限り、時間やコストを割きたくない」「正しく手続きを進めたい」という場合に、特に適しているでしょう。
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まとめ
役員の変更手続きは、会社を経営するうえでは避けては通れない道です。しかし非常に複雑であり、かつ多くの点に注意して臨む必要があります。
ここまで説明した内容を参考に、役員変更に必要な処理をスムーズに進めていきましょう。
また「初めての役員変更登記で不安……」「時間が取れなくて困っている」という方は、変更登記サービスの活用や、専門家への代行依頼を検討するのもおすすめです。