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目次
普通株式と種類株式の違いとは?
一般的に「株式」と呼ばれているものは普通株式を指します。
普通株式の株主は、持っている株数に応じた権利を平等に所有し、株主総会を通じた会社経営への参加や、配当の受け取りができます。つまり、1つの株式に付与されている権利の内容は平等です。
普通株式の株主は、持っている株数に応じた権利を平等に所有し、株主総会を通じた会社経営への参加や、配当の受け取りができます。つまり、1つの株式に付与されている権利の内容は平等です。
一方、種類株式は、株主が保有する種類株式によって異なる権利を持っています。
例:会社が剰余金の配当に関して、普通株式よりも優先して配当を受け取る種類株式を発行した場合、その種類株式の株主は普通株式の株主よりも優先的に配当金を受け取ることができる。
ただし、優先的に配当金を受け取る代わりに、株主総会での議決権行使が制限される場合がある。
例のように、種類株式は株主が得をする仕組みだけではなく、一定の制約も含まれる場合があります。
種類株式を発行する理由は?
株主には配当金に関心があるが議決権には興味がない人や、逆に配当金よりも経営に参画したいと考える人など、様々な要望が存在します。
会社と株主双方が納得できる内容で種類株式を発行すると、「さまざまな株主のニーズを満たしつつ、株主への柔軟な対応を可能にする」ことができます。
種類株式の一覧
種類株式は以下の9種類が定められています。(会社法第108条第1項各号)
剰余金の配当 (会社法第108条第1項1号) | 剰余金の配当について優先配当を受けることができる。 また、全く剰余金の配当を受けられない等、剰余金の配当金額を普通株式よりも多くしたり少なくしたりすることができる。 |
残余財産の分配 (会社法第108条第1項2号) | 残余財産の分配について優劣等を決めることができる。 なお、剰余金の配当と残余財産の分配を一切受けられない内容の種類株式は発行できない。(会社法第105条) |
株主総会において議決権を行使することができる事項 (会社法第108条第1項3号) | 株主総会での議決権を行使できる事項を定めることができる。 一部の事項に関してのみ議決権を行使できないとすることも、全ての事項に関して議決権を行使できないと定めることもできる。 当該の定めがある種類株式は、一般的に議決権制限種類株式と言われている。 |
譲渡による当該の種類株式の取得について当該の株式会社の承認を要すること (会社法第108条第1項4号) | 譲渡による当該の種類株式の取得について、当該の株式会社の承認を要することを定めることができる。 当該の定めがある種類株式は、一般的に譲渡制限種類株式と言われている。 |
当該の種類株式について株主が当該の株式会社に対してその取得を請求できること (会社法第108条第1項5号) | 株主が会社に対して、取得している株式の買い取りを請求できるとの内容を定めることができる。 ※具体的な内容は以下(1)~(3) (1)株主が会社に対して、株式の取得を請求することができる旨 (2)会社が株式を取得することと引換えに交付する対価の内容(金額、個数、算定方法等) (3)株主が取得請求できる期間を定める必要がある旨 当該の定めがある種類株式は、一般的に取得請求権付種類株式と言われている。 |
当該の種類株式について、当該の株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること(会社法第108条第1項6号) | 定款で定めたある一定の事由が発生した場合に、会社が株主の同意なしに株式を買い取れるという内容を定めることができる。 当該の定めがある種類株式は、一般的に取得条項付種類株式と言われている。 |
当該の種類株式について、当該の株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること (会社法第108条第1項7号) | 種類株式を株主総会の特別決議によって、その全部を買い取れるとの内容を定めることができる。 当該の定めのある種類株式は、一般的に全部取得条項付種類株式と言われている。 |
株主総会等で決議すべき事項のうち、当該の決議の他、当該の種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とすること (会社法第108条第1項8号) | 株主総会等の決議の他、当該の種類株主総会の決議が必要とすることが可能と定めることができる。 取締役の選解任、取締役の報酬の決定、会社組織の再編等のさまざまな決議事項について、当該の種類株主総会の決議が必要と定めることができる。 当該の定めがある種類株式は、一般的に拒否権条項付種類株式と言われている。 |
当該の種類株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること (会社法第108条第1項9号) | 種類株主総会で取締役や監査役を選任できると定めることができる。 なお、種類株主総会で選任された取締役や監査役を解任するには、同種類株主総会で決議をする必要がある。 当該の定めがある種類株式は、一般的に役員選任権付種類株式と言われている。 |
種類株式の発行手順
種類株式を発行する手続きは以下の通りです。
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(1) 株主総会の特別決議
株主総会で特別決議を行い、会社の定款を変更します。この際、「発行可能株式総数および発行可能種類株式総数」と「種類株式の内容」を決定します。 -
(2) 募集事項の決定
種類株式の募集に関する詳細事項を決定します。 -
(3) 種類株式の割当て
募集を通じて引受人が応募し、払込期日または払込期間内に払込金額を全額払い込むと、種類株式が割り当てられます。 -
(4) 登記申請
払込期日または払込期間の終了後、2週間以内に株式の登記申請を行います。これにより、種類株式の発行が正式に登記されます。
また、普通株式のみを発行している会社が一部を種類株式に変更することも可能です。
この場合は、株主総会の特別決議で定款を変更します。さらに種類株式への変更を希望する株主全員と、普通株式に留まる株主全員の合意を得る必要があります。
ただし普通株式に留まる株主に不利益がない場合は、普通株式に留まる株主全員の合意を得る必要はありません。