事業目的とは
事業目的とは会社を設立する際には必ず書かなければならないもので、定款の中の絶対的記載事項の一つです。
定款に記載する事業目的は、取引先や金融機関が会社をチェックする際に最初に確認する項目です。そのため“会社がどういった事業を行っているのか”を、明確かつ具体的に伝えられるような内容にしましょう。
また罰則はないものの、原則的に定款に記載されていない事業は行えません。したがって事業目的をどう定めていくかという点は、会社経営において非常に重要です。
■定款とは:会社のルールが記載されたもので、“会社の憲法”と呼ばれることも多いです。
事業目的を決める際のルール
続いて、事業目的を決める際のルールについて説明します。
主に重視するものとして、下記のようなものが挙げられます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
- 適法性
- 営利性
- 明確性
適法性
■適法性とは:適法な事業しか目的として定めることができないということを意味する。
会社設立に伴い、事業目的を決める際は“適法性”を確保しましょう。その会社の取り組みや目的が違法ではないことを示せるよう、事業目的を定めることが大切です。
次のように違法行為にあたる内容の業務であれば、当然ですが事業目的として認められません。
・資格を保有していない一般企業が、士業など特定の資格が必要な業務を事業目的にした場合
・税理士のみ行える税務書類の作成といった業務を、一般企業が事業目的にした場合 など
営利性
■営利性とは:利益をあげる事業を「目的」としなければならないことを意味する。
次に、“営利性”についてもチェックしましょう。なぜならNPO法人などの非営利団体を除き、会社は営利目的、つまり利益を上げることを目的に活動する必要があるためです。
そのため事業目的は、利潤を追求する内容を必ず記載することになっています。ボランティアといった営利性のない事業目的などは設定できないため、注意しましょう。
明確性
■明確性とは:一般的に理解可能な日本語の事業を「目的」としなければならないことを意味する。
“明確性”が高いかという点も、見直しましょう。
この明確性を一言で表すと、「誰が読んでも、そこに何が書いてあるかわかる内容にすること」。
事業目的とは、いわば“自分の会社がどんな会社なのか”と自己紹介をする部分になるため、あいまいで不明確な表現は避けた方が良いでしょう。
加えて下記のような事項があると明確性がないと判断され、最終的に登記できないこともあります。
・一般の人が理解しづらい表現や文言
・専門用語や業界用語
また事業目的を決める際に明確性があるかを判断するには、「現代用語の基礎知識」や「イミダス」を用いると便利です。こちらもぜひご活用ください。
事業目的の決め方|実践すべき4ステップ
事業目的の決め方で実践すべき4ステップを解説します。
(1)必要な許認可の有無、認可の申請要件を確認
1つ目のステップは、必要な許認可の有無、認可の申請要件を確認することです。そのうえで認可が必要であれば、申請要件をチェックしておきましょう。
許認可や届け出が必要な業種については、こちらをご覧ください。
- 宅地建物取引業
- 産業廃棄物処理業
- 運送業
- 中古品の販売
- 旅行業者代理業(旅行代理店)
- マッサージ など
ただし事業によっては、複数の許認可が必要なケースもあります。たとえばコンビニを営業する場合は「食品販売業登録(保健所)」「一般酒類小売業免許(税務署)」「たばこ小売販売業許可(JT)」など、取り扱う商品に応じてさまざまな許認可を得なければなりません。
(2)同業他社の事業目的を確認
2つ目のステップは、同業他社の事業目的をチェックすることです。
自社と同じ事業、あるいは似た事業を手がける会社の定款を読めば、「どのような目的にするべきか」というイメージを描きやすくなるはずです。
他社の定款はその企業のサイトから閲覧できることもありますが、難しい場合は法務局の法人登記簿で確認可能です。手数料はかかるものの、自社の事業目的を決める際に必要な情報を確実に得られるでしょう。
会社・法人の登記事項証明書及び登記簿の謄本・抄本の請求について、知りたい方は「法務省のホームページ」をご覧ください。
(3)事業拡大や将来のことも視野に入れる
3つ目のステップは、事業拡大や将来のことも視野に入れることです。事業目的は決めた後も変えられますが、その際は定款も変える必要があります。
定款を変える手続きには多くの手間が生じるうえ、登録免許税の3万円がかかります。また定款は、そもそも頻繁に変えるものではありません。
そのため会社設立時にはしなくても、将来的に行う可能性がある事業は記載しておきましょう。
(4)「前各号に附帯関連する一切の事業」を追記
4つ目のステップは、「前各号に附帯関連する一切の事業」を追記することです。
事業目的の作成にあたり、「前各号に附帯関連する一切の事業」と各目的の最後に入れると、定款に記載していない事業でも関連事業であれば行えるようになります。事業目的に記載した内容と関連性のある業務を広くカバーできるぶん、将来の事業に幅を持たせられる点が魅力でしょう。
「事業目的 付帯事業」の記載例は、以下の通りです。
また他の記載例について知りたい方は、こちらが参考になります。より安心して自社の経営に臨めるため、「前各号に附帯関連する一切の事業」の追記もご検討ください。
事業目的の具体例|事業・業種別
この項目では、事業目的の具体例を事業・業種別に紹介します。あくまでも一例ではありますが、下記の表にまとめました。自社の事業目的を決める際に、ぜひ参考にしてください。
建設業 | ・総合建設業 ・とび・土木工事業 ・内装仕上工事業 ・板金工事業 ・〇〇に関するコンサルティング |
不動産業 | ・宅地建物取引業 ・不動産の売買、賃貸借、管理、仲介、分譲、保有及び運用 ・不動産に関するコンサルティング業務 ・建築の現場管理業 ・ビルメンテナンス業 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | ・太陽光発電、その他エネルギーに関わる製品・機器の工事、メンテナンス ・一般廃棄物、産業廃棄物の収集、運搬、処理、保管及び再生利用 |
医療・福祉業 | ・老人ホームの経営 ・訪問介護及び在宅介護施設の経営 ・歯科診療所の経営 ・整骨院の経営 |
教育・学習支援業 | ・予備校の経営 ・学習教室の経営 ・託児所及び保育所の経営 |
飲食店・宿泊業 | ・飲食店の経営 ・コンビニエンスストアの経営 ・旅館、ホテル等宿泊施設の運営 ・住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、住宅宿泊管理業及び住宅宿泊仲介業 |
卸売・小売業 | ・食料品の卸売り、小売り ・日用雑貨の販売 ・古物営業法に基づく古物営業 |
情報通信業 | ・ソフトウェア及びハードウェアの研究、開発、設計、製造、保守 ・EC(電子商取引)サイトの企画、制作、配信、運営 ・コールセンター業務(電話受信発信事務代行業) |
事業目的を決める際の注意点
最後に、事業目的を決める際の注意点を紹介します。
事業目的を変更する場合は、定款の変更も必須
前述した通り会社設立後も事業目的は変更できますが、そのときは定款も変えなければなりません。
定款を変えるには登録免許税の3万円がかかることに加え、株主総会で決議を取るなど多くの手間が生じます。
なお定款変更には議決権の過半数を持つ株主が出席する、特別決議が必須です。さらに当決議には、出席した株主の議決権3分の2以上の賛成を要します。
そのため“事業目的はそう簡単に変更できるものではない”と考えておきましょう。
融資に影響を与える事業項目がある
事業目的によっては金融機関からの融資が受けられない、あるいは受けにくいものがあります。融資の対象外になりやすいといわれているのは、次の業種です。これらの業種の場合、事業目的への書き方などに十分注意しましょう。
- 不動産投資事業
- 金融・保険事業
- 延滞金の取り立て業・集金業 など
事業目的の数を増やしすぎない
事業目的の数を増やしすぎないようにしましょう。
定款の事業目的の数に制限はないため、設立登記の申請時はいくつでも記載・登記を行えます。
しかしあまりにも事業目的の数が多いと、世間からは「この会社の本業は何?」と思われてしまうでしょう。その結果、自社への不信感を抱かれやすくなり、業績悪化などを引き起こすおそれがあります。
そのため、将来手がける可能性があるものは事業目的に入れてOKですが、やる予定が一切ない事業を記載するのは避けましょう。
特に創業後すぐに融資を受ける場合は、金融機関の融資担当者が定款を見た際に「怪しい会社だ」と感じ、融資を断られる可能性もあります。したがって内容に不安があるときや融資を受ける可能性があるときは、会社設立に詳しい専門家に事前に相談すると良いでしょう。
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まとめ
この記事では事業目的を決める際のルール、具体的な決め方や注意点を解説しました。
事業目的は後から変更できますが、それには定款の変更もあわせて必要となります。定款を変えるにはそれなりの手間と費用がかかるため、そう頻繁に変えられるものではありません。
また目的外の事業を行うと、取引先や金融機関からの信頼を失い、経営に支障をきたすこともあります。したがって、自社の事業目的は慎重に決めていくことが大切です。