株主が亡くなった場合、所有していた株式はどうなるの?相続後の手続きとは?

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目次

株主が亡くなった場合、株式は相続される?

株主が死亡した場合、基本的に株式は相続人に受け継がれます。
遺言書や遺産分割協議によって、株式の相続人が決まれば、その方が新しい株主です。
遺産分割協議が未了の場合は、相続人同士で株式を共有することになります。
 
相続人同士で株式を共有する際には、保有する株式の権利が均等になるように分割されます。
相続人が2人いる場合は、それぞれが2分の1ずつの権利を保有しますが、
単独で株式の権利行使や処分を行うことはできません。
相続した株式を自由に売買したり譲渡したりするには、もう一方の相続人の同意が必要となります。
 
このように、株主が亡くなった場合は相続人によって株式が引き継がれますが、相続人同士で共有するため、重要な決定や処分には共同の合意が必要となります。

株式を相続した後の手続きとは?

複数の相続人が株式を共有している場合、議決権の行使(株主が株主総会での決議に参加し、事案に対して賛否を投票すること)について以下の手続きが必要です。

(1)相続人の中で、過半数以上の同意を持つ1人を指名する

(2)指名された相続人は、会社に対してその旨を通知する

(3)通知を行った後、指名された相続人が株主総会で議決権を行使する

この手続きは、会社法の第106条によって定められています。
 
複数の相続人が株式を共有している場合、相続人の過半数以上の同意を持つ1人が議決権を行使することになります。以上の手続きを経て、議決権の行使が実現されます。

会社が相続人を確認するには?

株主の相続人が不明な場合、会社はどうやって確認するの?

会社は株主が亡くなった場合、相続人が誰なのかを確認する必要があります。相続人を特定するためには、相続人全員が分かる戸籍謄本一式や遺産分割協議書、または相続人間で相続分の過半数により代表者を選出した届出書の提出を求める方法があります。

株主総会の招集通知は?

株主の死亡が確認できているにも関わらず相続人が分からない場合、会社は相続人を調査し、株主総会の招集通知を出す必要があります。相続人を特定するためには、亡くなった株主の戸籍をたどり、相続人の情報を収集することが重要です。相続人の住所は、相続人の戸籍の附票を取得することで確認できます。
 ただし、相続人が会社の経営に興味を持っていない場合は、株式の買い取りを検討することも考えられます。

相続人がいない場合、会社の対応は?

会社は亡くなった株主の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続財産管理人の申し立てを行う必要があります。裁判所が選任した相続財産管理人との交渉を通じて、自己株式の買い取りなどの対応策を検討することができます。
 

株主名簿の名義書換はどうするの?

名義書換とは、株式を取得した方の住所・氏名・株数などを株主名簿に登録することです。
株主が亡くなった場合、株式の登録情報を更新する名義書換手続きが必要となります。
株券発行会社の場合、相続人が株券を提示すれば、単独で名義書換の手続きが可能です(会社法規則23条2項1号)。
 
また、相続人が以下の事実を証明した場合も、単独で名義書換の手続きを行うことができます。

(1)  株主名簿上の株主の死亡

(2) 自らが株式を相続により取得したこと

(1) の場合、株主の死亡が記載された除籍謄本を提出します。

(2) の場合、株主の出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(共同相続人全員の実印で捺印されたもの)、共同相続人全員の印鑑証明書などの書類を提出して証明します。

株式譲渡制限の規定は相続に適応される?

譲渡制限がある会社は、株式の譲渡には会社の承認が必要です。
しかし株主が亡くなった場合、相続に関しては株式譲渡制限の規定は適用されません。相続人は会社の承認を得ずに株式の相続を主張することができます。
 
このため、会社にとって不都合な相続人が株主となる可能性があります。
会社は予防策として定款に「売渡請求ができる旨の内容」を明確に規定しておく必要があります。
定款に相続人に対して株式を売渡請求できる権利を与える規定を設けることで、会社にとってリスクを回避することができます。