公開会社と譲渡制限会社は何が違う?会社の経営権を保護できるのはどちら?

株式会社は株式を第三者に譲渡する場合があります。全ての株式に譲渡制限がある会社を譲渡制限会社、一部でも譲渡制限のない会社を公開会社と言います。譲渡制限会社では、株式を譲渡するときに株式会社の承認(具体的な承認機関として株主総会、代表取締役、取締役会等を定めることが多い)が必要です。
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目次

公開会社と譲渡制限会社の違いについて

公開会社と譲渡制限会社は両方とも株式会社です。しかし株式の譲渡に関する制約が異なります。
公開会社は株式の一部または全てが自由に譲渡可能ですが、譲渡制限会社では株式の譲渡には会社の承認が必要とされます(具体的な承認機関として株主総会、代表取締役、取締役会等を定めることが多い)。
 
譲渡制限会社は、経営において重要な意思決定権を持つ株主を選ぶことで、経営への不適切な介入や乗っ取りのリスクを抑えられます。
株主が急に変わることによる経営の混乱を避けるため、譲渡制限会社は全ての株式を「譲渡制限株式」とし、譲渡に関する承認機関を定款に定めています。
 

譲渡制限会社の主なメリット・デメリットについて

メリット(1) 経営サイドにとって望ましくない人物が株主になることを防止できる
(2) 取締役会を設置する必要がない(公開会社の場合は必ず設置する必要
がある)
(3) 定款で役員(取締役・監査役・会計参与)の任期を最大で10年まで伸
長できる
(4) 計算書類の作成にかかる負担が少ない(公開会社の場合、計算書類に
記載すべき注記項目は約20項目だが譲渡制限会社の場合は6項目のみ)
(5) 経営サイドで後継者を決めた場合にスムーズに事業承継を進められる
デメリット(1) 譲渡制限株式を取得した第三者から株式買取請求権を行使される可能
性がある
(2) 相続された譲渡制限株式に対して売渡請求権が行使された場合、経営
サイドからの内部的な会社の乗っ取りが発生する可能性がある
 譲渡制限株式会社は、会社が信頼できる人物を株主として選ぶことが可能です。株式の譲渡制限を定めることで、自社の株式が第三者に広く分散することなく経営を安定させることができます。特に家族経営のような小規模な会社にとっては、経営の安定性を確保できるため安心です。

また、譲渡制限株式会社では役員の任期を最大で10年まで延長することができます。役員改選に伴う手続きの負担が軽減され、経営陣の安定性を確保しながら長期的なビジョンを実現できます。

 一方で、デメリットも存在します。下記でデメリットのひとつである「株式買取請求権が行使される可能性」について解説します。

「株式買取請求権が行使される可能性」について

「株式買取請求権が行使される可能性」とは:

株式買取請求権とは、会社が株式譲渡を承認しなかったときに株主が行使できる権利のこと。会社側から承認を得られず株式の譲渡が認められなかった場合、株式の譲受人はこの権利を行使できる。会社に公正な価格で株式を買い取らせることが可能。株式買取請求権が行使されると、会社は別の買取人を用意するか、自社で株式を買い取るかを選択しなければならない。
譲渡制限株式会社では、株式買取請求権が行使されることで対応には時間と費用がかかることがあります。会社は対応の期間が定められており、期限内に対応できない場合は「株式譲渡の承認を決定した」と判断されてしまうケース(みなし承認)もあります。

「みなし承認」扱いになる場合とは

(1) 譲渡承認請求から「2週間以内に」その可否についての「通知がない」場合
(2) 承認可否の通知から「40日以内に」買取株式数などの「通知がない」場合
(3) 承認可否の通知から「10日以内に」指定買取人からの買取株式数などの「通知がない」場合

経営サイドとしては、日常業務に株式買取請求権の対応が加わると負担が大きくなってしまいます。
 
株式買取請求権については、公正な価格を巡って株主と会社との間で折り合いがつかず裁判に発展するケースもあります。
しかし、株主買取請求権は株主の人数が多い企業で問題となることが一般的です。株主が少ない中小企業や経営者自身が株主である企業では、譲渡制限株式が譲渡されることは稀と言えます。