労働者のモチベーションは、「離職率」、「事業の生産性」など、多くの問題に関わります。
事業主にとって、労働者の働く意欲をいかにして高めるかは大きな課題のひとつです。
モチベーションアップにつながる有効な手段のひとつとして、「昇給」があげられるでしょう。
しかし、費用面の不安から、なかなか賃金の増額に踏み切れない事業主も多いはずです。
そんなとき、ぜひ活用したい制度が「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」です。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」は、契約社員やパート等の有期雇用労働者の昇給に対する助成制度です。
本コラムでは、記入例や必要書類のチェックリストをご紹介します。
この記事の目次
「キャリアアップ助成金」の概要
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」について
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」は、全てまたは一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給した場合に助成する制度です。
全てまたは一部の有期雇用労働者等の賃金規定等を3%以上増額改定した場合、対象労働者数に応じた額が事業主に支給されます。
「賃金規定等」とは
賃金規定や賃金一覧表等、労働協約または就業規則において賃金額の定めがあれば支給対象となります。
「キャリアアップ助成金」の対象となる事業主
次の(1)~(5)は、「キャリアアップ助成金」の支援対象となる事業主の主な条件です。
※「事業主」には、民間の事業者の他、民法上の公益法人、特定非営利活動促進法上の特定非営利活動法人(いわゆるNPO法人)、医療法上の医療法人、社会福祉法上の社会福祉法人等も含まれます。
詳細については、「キャリアアップ助成金のご案内」の4ページをご参照ください。
- (1) 雇用保険適用事業所の事業主
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(2) 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主
※キャリアアップ管理者は、複数の事業所および労働者代表との兼任はできません。 - (3) 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格 の認定を受けた事業主
- (4) 実施するコースの対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整 備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主
- (5) キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
キャリアアップ管理者とは
「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」に規定する「キャリアアップ管理者」をいい、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として必要な知識および経験を有していると認められる者を指します。
キャリアアップ計画とは
有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載するものです。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の対象となる事業主
次の(1)~(6)に該当する事業者が「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の主な対象です。
※その他の条件については「キャリアアップ助成金のご案内」の34ページをご参照ください。
- (1) 有期雇用労働者等に適用される賃金規定等を作成している事業主
- (2) 賃金規定等を3%以上増額改定し、当該賃金規定等に属する有期雇用労働者等※2に適用させた事業主(新たに賃金規定等を整備する場合を含む。)
- (3) 増額改定前の賃金規定等を、3か月以上運用していた事業主 (新たに賃金規定等を整備する場合は、整備前の3か月分の有期雇用労働者等の賃金支払状況が確認できる事業主)
- (4) 増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用し、かつ、対象労働者について定額で支給されている諸手当を減額していない事業主
- (5) 支給申請日において当該賃金規定等を継続して運用している事業主 (ただし、増額改定後であって最低賃金の引上げに伴う変更は除く。)
- (6) 【加算措置】 職務評価を経て賃金規定等改定を行う場合にあっては、有期雇用労働者等および正規雇用労働者を対象 に、職務評価を実施した事業主
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の対象となる労働者
次の(1)~(6)に該当する労働者が「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の主な対象です。
※その他の条件については「キャリアアップ助成金のご案内」の33ページをご参照ください。
- (1) 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月以上前の日から増額改定後6か月以上の期間継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等
- (2) 就業規則または労働協約に定めるところにより、増額改定した賃金規定等を適用され、かつ、増 額改定前の基本給に比べて3%以上昇給している者
- (3) 賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理 的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていない者
- (4) 賃金規定等を増額改定した日以降の6か月間、当該対象適用事業所において雇用保険被保険者で あること
- (5) 賃金規定等の増額改定を行った事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族※4以外の者
- (6) 支給申請日において離職していない者
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の助成額について
全てまたは一部の有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定し、昇給した場合に助成金が支給されます。
1年度1事業所当たり100人までです。
増額の対象者が全ての非正規雇用労働者の場合でも、一部(雇用形態別・職種別等)の非正規雇用労働者の場合でも、賃金増額を行った労働者1人当たりの助成額を同額とします。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の申請の流れ
対象労働者の賃金規定等を改定した(賃金規定等の増額を適用した)後6か月分の賃金を、支給した日の翌日から起算して2か月以内に申請します。
(1) キャリアアップ計画の作成・提出
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、労働組合等の意見を聞いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けます。
賃金規定等を増額改定する前日までに提出します。
(2) 賃金規定等の増額改定の実施
増額改定後の雇用契約書や労働条件通知書を対象労働者に交付し、当該賃金規定等に属する有期雇用労働者等が昇給している必要があります。
また、賃金規定等を作成・規定し、増額改定実施までに3か月以上運用する必要があります。(新たに賃金規定等を整備する場合は除く)
(3) 増額改定後の賃金に基づき6か月分の賃金を支給・支給申請
増額改定後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
(4) 審査、支給決定
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の必要書類を確認
下記(1)~(11)が「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の主な必要書類です。
詳細については「キャリアアップ助成金のご案内」の36ページをご参照ください。
- (1) キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)
- (2) 賃金規定等改定コース内訳(様式第3号、別添様式3 第1面・第2面)
- (3) 支給要件確認申立書
- (4) 支払方法・受取人住所届(未登録の場合に限る)
- (5) キャリアアップ計画書(写)
- (6) 改定前後の労働協約又は就業規則(写)
- (7) 対象労働者の改定前後の雇用契約書 または労働条件通知書等(写)
- (8) 対象労働者の改定前後の賃金台帳等(写)
- (9) 賃金台帳等に関する確認書
- (10) 対象労働者の出勤簿またはタイムカード(写)
- (11) 中小企業事業主であることの確認書類
- ※上記の他、労働局が必要と認める書類の提出を求めることがあります。
最後に
有期雇用労働者が占める働く人の割合は、昭和60年から現在にかけて2倍以上に増えました。
今や労働者の「5人に2人がアルバイトや契約社員」という職場は珍しくありません。
このような有期雇用労働者に焦点を当てた職場環境の改善が求められています。
今回ご紹介した「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」は、昇給という方法で有期雇用労働者のモチベーションアップを目指す事業主を支援する制度です。
労働者の意欲、能力を向上させ、事業の生産性を高め、優秀な人材を確保するために、ぜひ、「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」をご活用ください。
出典:厚生労働省