介護等の理由に本業を辞める介護離職。
介護離職というと中高年のイメージが強いですが、ヤングケアラーという言葉からも分かるように若い世代も例外ではありません。
介護離職は労働者だけではなく事業主にとってもデメリットが大きいものです。
今回紹介する「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」は、「介護と仕事の両立」を目的とし、労働者の介護休業の取得促進や職場復帰の手助け、または働きながら介護を行うための勤務制度を整えた事業主を支援する制度です。
また、本コラムは「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」の概要を紹介するものです。
「介護離職防止支援コース助成金(新型コロナウイルス感染症対応特例)」については厚生労働省の公式サイトをご覧ください。
※この特例は助成対象期間を令和4年度末まで延長されました。
「介護離職防止支援コース助成金(新型コロナウイルス感染症対応特例)」について
この記事の目次
「両立支援等助成金」とはどんな制度?
「両立支援等助成金」とは、仕事と家庭の両立支援に取り組む事業主等を支援する制度です。
仕事と育児の両立支援や男性の育児休業取得を推進させる等の取り組みを行う事業主が助成金を受給できます。
「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」の内容は?
「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」は、「介護支援プラン」を作成し、プランに沿って労働者の円滑な介護休業の取得・職場復帰に取り組み、介護休業を取得した労働者が生じた、または介護のための柔軟な就労形態の制度(介護両立支援制度)の利用者が生じた中小企業事業主に助成金を支給する制度です。
「介護支援プラン」(以下、「プラン」)とは、労働者の介護休業の取得および介護休業終了後の職場復帰を円滑にするための措置または仕事と介護との両立に資する制度の利用を円滑にするための措置を定めた計画のことを指します。
プランの作成の際には、厚生労働省のサイトに掲載している「介護支援プラン策定マニュアル」を参考にしてください。
「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」には3種類の助成金があります。
【両立支援等助成金 介護離職防止支援コース】「A介護休業」の要件
<休業取得時>
- (1) 介護休業の取得、職場復帰について、プランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること
- (2) 介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、プランを作成すること
- (3) プランにもとづき、業務の引き継ぎを実施し、対象労働者が合計5日(所定労働日)以上の介護休業を取得すること
<職場復帰時>
休業取得時と同一の対象介護休業取得者である(休業取得時を受給していない場合申請不可)とともに、休業取得時の要件かつ以下を満たすことが必要です。
- (1)「休業取得時」の受給対象である労働者に対し、介護休業終了後にその上司または人事労務担当者が面談を実施し、面談結果を記録すること
- (2) 対象労働者を、面談結果を踏まえ原則として原職等に復帰させ、原職等復帰後も申請日までの間、雇用保険被保険者として3か月以上継続雇用していること
【両立支援等助成金 介護離職防止支援コース】「B介護両立支援制度」の要件
- (1) 介護両立支援制度の利用について、プランにより支援する措置を実施する旨を、あらかじめ労働者へ周知すること
- (2) 介護に直面した労働者との面談を実施し、面談結果を記録した上で介護の状況や今後の働き方についての希望等を確認のうえ、プランを作成すること
- (3) プランにもとづき業務体制の検討を行い、以下のいずれか1つ以上の介護両立支援制度を対象労働者が合計20日以上(※法を上回る介護休暇制度と介護サービス費用補助制度を除く)利用し、支給申請に係る期間の制度利用終了後から申請日までの間、雇用保険被保険者として継続雇用していること
・所定外労働の制限制度
・時差出勤制度
・深夜業の制限制度
・短時間勤務制度
・介護のための在宅勤務制度
・法を上回る介護休暇制度
・介護のためのフレックスタイム制度
・介護サービス費用補助制度
「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」の支給額
※<>は生産性要件を満たす場合です。
生産性について:
「生産性要件」を満たした場合、助成金の支給額が増額されます。
「生産性要件」とは、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が6%以上伸びているまたは、1%以上6%未満伸びていて、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていることを指します。
「両立支援等助成金 介護離職防止支援コース」の申請方法
- (1) 就業規則等への明文化・労働者への周知
- (2) 従業員との面談、介護支援プランの作成
※介護支援プランは原則として対象労働者の介護休業開始前または介護両立支援制度利用開始前に作成する必要がありますが、介護休業開始後または本制度の利用期間中に作成してもかまいません。
(2)以降は「A介護休業」と「B介護両立支援制度」で申請の流れが異なります。
「A介護休業」
- (3) 介護支援プランにもとづく業務の整理、引き継ぎ
- (4) 介護休業の取得、合計5日以上
- (5) 職場復帰
- (6) 継続雇用3か月後支給申請(申請期間2か月)
「B介護両立支援制度」
- (3) 介護支援プランにもとづく業務体制の検討
- (4) 介護両立支援制度の利用(所定外労働の制限制度や時差出勤制度等)
- (5) 継続雇用1か月後支給申請(申請期間2か月)
出典:厚生労働省