目次
法人の印鑑証明書とは
法人の印鑑証明書とは、「書面に捺印した印鑑が、正式な印鑑であることを証明するための書類」を指します。法人の設立時において、印鑑証明書の登録は必須です。
- 商号(会社名)変更登記
- 本店移転登記の手続き等
加えて変更登記申請時では、上記のような場面で用いられます。「具体的にどのような場面で、印鑑証明書が必要になるのか」については、次の項目で詳しく説明します。
また法人の印鑑証明は、法務局で行うこととなっています。なぜなら、法務局では“法人登記の申請書類に押印する株式会社の代表者等の印鑑を、あらかじめ印鑑登録する制度が整備されているため”です。これによって印鑑の所有者を確認し、第三者に悪用されるおそれを防げるようになっています。
個人の印鑑証明とは異なり、市区町村では法人の印鑑登録はできないため注意しましょう。
法人の印鑑証明書が必要な場面
続いて、法人の印鑑証明書が必要な場面について、見ていきましょう。
実際にこの証明書を用いる場面として、下記のようなものが挙げられます。
- 法人登記や登記事項変更の申請をする
- 法人用の銀行口座を開設する
- 法人名義の不動産や自動車を売買する
- 金融機関から融資を受ける
法人の印鑑証明は個人の印鑑証明と同じく、本人確認をして取引等の安全を図るために利用されます。そのためこのような重要な取引時などで、提出を求められる可能性が高いです。
しかし提出先によっては、印鑑証明書の提出が求められないこともあります。
例えば銀行口座を開設する場合、住信SBIネット銀行の「法人オンライン口座開設」であれば、インターネットから申し込みが可能で、かつ「登記簿謄本」「印鑑証明書」などの提出は原則不要とのことです。
したがって何らかの手続きを進める際には、提出先の必要書類を事前に確認すると良いでしょう。
法人の印鑑証明を取得する方法と手順
次に、法人の印鑑証明書を申請する方法と手順をまとめました。
主な方法として、以下の3つが挙げられます。
- 法務局の窓口
- 郵送での申請
- オンライン申請
それでは、それぞれを詳しく解説していきます。
法務局の窓口
印鑑証明書は、法務局の窓口で申請・取得することができます。現在はシステムの一元化により、会社の管轄の法務局でなくても、全国のどこの法務局でも申請・取得が可能です。
しかし会社の本店、もしくは支店の所在地を管轄する法務局(登記所)で申請を行うのが、最も一般的となります。管轄する各法務局・地方法務局はこちらで調べられるため、ぜひご活用ください。
「印鑑証明書をできるだけ早く取得したい」「わからないことをその場で質問し、解決を図りたい」という場合などは、最寄りの法務局(登記所)で申請し、交付を受けると確実でしょう。
印鑑証明書を窓口で取得する方法は、以下の通りです。
- (1)会社の管轄区域の法務局に出向く。
- (2)印鑑登録証明書交付申請書に、「会社の商号」「会社等の住所」「印鑑提出者の資格」「氏名」「出生年月日」「印鑑カード番号」を記載する。
- (3)決められた手数料額に当たる収入印紙(※登記印紙も可)を貼り付ける。
- (4)印鑑カードを添え、法務局の窓口に提出する。
「印鑑登録証明書交付申請書」は備え付け、もしくは「法務局のホームページ」内からダウンロードできます。事前に必要事項などを記入できるため、よりスピーディーに手続きしたいという方には適しているでしょう。
なお必要な手数料と印鑑カードに関する情報は、後の項目で詳しく解説します。
また窓口に証明書発行請求機が設置されている場合、申請書を作成せず請求機から入力操作すれば、証明書を交付窓口から受け取れます。証明書発行請求機を設置している法務局の一覧については、「証明書発行請求機設置場所一覧(※法務局のサイトより)」をご覧ください。
郵送での申請
法人の印鑑証明書は、郵送で受け取ることも可能です。
またその場合は、以下の手順で申請を行えます。
- (1)法務省ホームページから、印鑑証明書交付申請書をダウンロードして印刷する。
- (2)「手数料分の収入印紙を貼り付けた申請書」「印鑑カード」「切手付きの返信用封筒」を同封。
- (3)法務局の担当窓口宛に郵送する。
※(1)印鑑証明書交付申請書のダウンロードは、こちらから行ってください。
書類が受理されたら、法務局から印鑑カードと印鑑証明書が郵送で届きます。また印鑑カードを同封するため、往復ともに普通郵便ではなく、書留や宅配伝票等を利用した方が安全でしょう。
郵送での申請は窓口に行く手間が減る分、印鑑証明書が手元に届くまで日数がかかります。その間は印鑑カードが手元にない状態になるため、「急ぎで追加の印鑑証明書が必要になるかもしれない……」という可能性があれば、窓口での請求がおすすめです。
オンライン申請
「一番手軽に申請したい」という方は、オンライン申請を活用しましょう。
オンライン申請をする際は「法人の電子証明書」をあらかじめ取得する必要があります。また専用のソフト「申請用総合ソフト」のダウンロードが必須のため、自身のPC環境が適合するか確認しましょう。
※ソフトウェアのダウンロードについて知りたい方は、「登記・供託オンライン申請システム」内をご覧ください。
「申請用総合ソフト」による請求のステップは、下記の通りです。
- 指定した住所に郵送で受け取る方法
- 受取先として指定した登記所、もしくは法務局証明サービスセンターの窓口で受け取る方法
法人の印鑑証明にかかる手数料
法人の印鑑証明にかかる手数料ついて、解説します。
手数料はオンライン請求の方が、窓口・郵送請求よりも安く設定されています。詳細については、下記の表をご覧ください。
法務局の窓口 | 450円/1通 |
郵送での申請 | 印紙代450円/1通+往復の郵送費 |
オンライン申請 | 郵送してもらう場合: 印紙代410円/1通
印紙代390円/1通 |
法人の印鑑カードを作成する方法
「法務局の窓口申請」「郵送で申請」「オンライン申請」、いずれの方法を選択するにしても、印鑑証明書の交付申請を行うためには、事前に印鑑カードが必要です。
印鑑カードを作成するためには、印鑑登録後に「印鑑カード交付申請書」を法務局に持参する、あるいは郵送します。
※記載事項の会社法人等番号とは:登記事項証明書に記載されている12桁の番号です。
窓口へ持参する場合、印鑑カード交付申請書は事前にプリントアウトしたものを用いますが、窓口でも入手できます。代表者が申請するのが原則で、申請に必要なのは法人の実印です。
代理人が持参する場合は「印鑑カード交付申請書」の下段が委任状を兼ねているため、窓口に行く人を「代理人」、代表者を「委任者」として記載し、法人の実印を押します。
また印鑑証明書と同様に、印鑑カード交付申請書も郵送で提出できます。郵送する場合、交付申請書と切手、もしくは着払いの宅配伝票等を貼った返信用封筒を同封して郵送します。返信先は、代表者住所または本店所在地を記載します。
後日印鑑カードが送られてくるため、前述した通り、往復ともに普通郵便ではなく、書留や宅配伝票等を利用した方が安全でしょう。
交付申請書はこちらからダウンロードできますので、ぜひご利用ください。
法人の印鑑証明書を取得する際の基礎知識|よくあるQ&A
法人の印鑑証明書を取得する際に生じる質問を、Q&A形式でまとめました。
請求できるのは代表のみ?
前述した通り、法人の印鑑証明書は原則代表の方が取得します。ただし代表以外の代理人でも請求ができ、特に委任状なども必要ありません。
取得する方法や手順は、先ほど「法人の印鑑証明を取得する方法と手順」内で説明した流れと同じです。
しかし、代理人の方が当証明書を取得するには「印鑑カード」が必須となります。そのため、事前に申請するのを忘れないようにしましょう。またオンラインで印鑑証明書を請求する場合は、「公的個人認証サービス電子証明書」が必要です。
■法務局の窓口と郵送での申請で、必要な書類や記入例について:
登記事項証明書 商業・法人登記・印鑑証明書等の交付請求書の様式(法務局)
■オンラインによる印鑑証明書の請求方法について:
オンラインによる登記事項証明書及び印鑑証明書の交付請求について 商業・法人関係(法務局)
請求する際に使う印鑑はどれ?
法人の印鑑証明書を請求する際に必要な印鑑は「代表者印」です。サイズなどの条件を下記に挙げていますので、登録時にぜひ参考にしてください。
- 印鑑は“照合に適するもの”である必要がある
- 登記所に提出する印鑑の大きさ:一辺の長さが1cmから3cmの正方形に収める
- 登記所に提出する印鑑の一辺の長さ:1cm から3cm の正方形に収める
したがって一般的な代表者印であれば、問題はないといえるでしょう。
印鑑証明書を取得するときの注意点は?
注意点(1):申請方法により受付方法が変わる
印鑑証明を申請する方法によって、受付時間や流れが変わります。
例えば法務局の窓口で申請する際は、当然ですが法務局の業務取扱時間の間に訪れなければなりません。受付可能な時間は平日の8時30分から17時15分までで、土日祝や年末年始はお休みとなります。
また郵送やオンラインで申請する場合、受付時間に制約はありません。しかし法務局のお休みを挟む場合に関しては、交付が遅れることも考えられます。
加えてオンライン申請で受取方法を法務局証明サービスセンター窓口に指定した場合、受取可能時間は平日8時30分から16時30分までです。受取を法務局にした場合、上記で説明した通り、窓口で受付可能な時間である「平日の8時30分から17時15分まで(※土日祝・年末年始休み)」となります。
したがって「急ぎで印鑑証明書がほしい」「時間に余裕があるため、ゆっくり対応したい」など、自社の状況に応じた申請方法を選びましょう。
注意点(2):コンビニでの取得は不可
個人の印鑑登録証明書であれば、マイナンバーカードもしくは住民基本台帳カードを用いれば、コンビニでも取得できます。しかし法人の印鑑証明書に関しては、法務局へ交付申請書の提出が必須であるため、コンビニでの取得は取得はできません。
まとめ
法人の印鑑証明書の概要や必要な場面、取得方法などを詳しくまとめました。手数料などもあわせて解説しましたが、いかがでしたか?
法人が活動するにあたり、登記申請・銀行口座の開設・融資の申し込みなど、印鑑証明書が必要になる場面は多く発生します。
そのため「具体的な取得手順」「注意すべき点」などを事前に知り、準備するとよりスムーズに手続きを進められるでしょう。